おれが行っていた中学は、男子は坊主にするのが当たり前的な学校で、疑問に思って担任、教頭、校長に「理由がわかりません、説明してください」と訴えた少年でした。
答えは「みんなもそうだからだ」とか「不良になる(なにそれ)」的な意味不明なもので、ロック魂を持つおれは長髪のままでした。

みんなもそうだからってのは、そこが軍隊や絶対主義であるならば確かにそうなのかも知れないが、てめぇの学校は「学生主導の自由な校風」とか抜かしてんじゃねーか! とか、不良ってのは一体なんだ、成績が良ければ優等生か? ならそうして見せようじゃねーか的な感じで、ついたあだ名が「本校始まって以来の問題児」でした。

でもね、正直言うとね? その昔母親に髪の毛を切ってもらってたんですね。
おれは子供の頃から爪でも髪でも、身体の一部分を切られると言う行為が凄く嫌いで、床屋に行くのを拒んでいたからなんですが。
で、ですね。耳元の髪の毛を切るときに、やっぱ不安じゃないですか、耳元で挟みの音がする、耳ごと切られるんじゃないかってやっぱ怖いわけですよ。
で、おれは母親に言いました。
「絶対に耳を切らないでくれよ」
 母親は笑いながら答えます。
「馬鹿だねぇ、誰が可愛い息子の耳を切るもんかい」
 そう言って耳元の髪の毛を切った瞬間、耳に激痛が走り、肩口にかけていたタオルが赤く染まって行きました。
ぶっちゃけ、これトラウマですわ。
切らないでねと訴えて、安心させた直後の惨劇ですよ。
もうね、耳元に聞こえる挟みの音は恐怖の象徴です。

そう言うこともあり、おれはこれまでの人生で短髪になったことはそう多くありません。
今までに出会った方々も様々な長髪の状態で出会ったことでしょう。
中には、腰まで伸ばして金髪だったメーテル状態のおれを知っている人も居るでしょう。
そんなおれにカミさんはまた言いました。
「パパの長髪ウザイ。猫っ毛のあたしにゃ憎むべき対象なんだよね。さっさと切ってきて」
「…なら、いっそバリカンとかで一気に坊主にしたいかな、ほらスキンヘッド? ちょっと恰好良くない?」
「そんなことしたら、即行別れるから」
orz…。
さらば青春の幻影。さらばメーテル。さらばわが青春の長髪人生よ! 最後の抵抗として、一緒にハイブリーチ剤買って、金髪にはしようと思ってます(ぉぃ